渡辺利夫・三浦有史『ODA(政府開発援助)―日本に何ができるか』2003年、中公新書
日本のODAは戦後賠償の形で始まり、89年には米国を抜いて世界最大となるが、今は総額で2位、国民一人当たりの負担額でみると先進22カ国中第7位であり、国民の不信と批判にさらされ、大幅な削減と室から両辺の転換を余儀なくされている。一方、欧米諸国は同時多発テロ(9・11)以降、貧困をなくす手段としてむしろODAを重視し、予算(米の02年度のODA予算を前年度比46.3%増額)は傾向にある。
開発途上国側の課題が多様化した現在、ODAはどうあるべきか。日本の開発経済学の第一人者であり、ODA改革懇談会座長を務めた渡辺利夫が、豊富なデータを用いて、現状と課題を平易に解説しながら、日本が国際社会のなかで果たすべき役割を考察する。ODA推進派、批判派のどちらか一方に偏ったODA関連本が多い中で、本書はバランスの取れた格好の良書であり、参考文献も充実しているので入門書としても最適といえるだろう。
(評者:北海道大学大学院経済学研究科・博士後期課程・環境経済学専攻 佐々木創)
郭洋春『アジア経済論』1998年、中央経済社
「従属理論?世界システム論?…」。援助の現場で熱く語ったりすると、時々出てくるこのような開発経済理論。それらを、開発を考える上で最低限理解しておいた方が良い理論をピック・アップし、なおかつその時代背景とともに考察している入門書。本書の内容は、大きく3部から成立し、他の2部はアジア諸国の成長要因、アジアの環境問題、食糧問題、軍事問題など多岐のテーマを扱っており、手元に置いておくと便利な一冊。出版が古いのでデータは自分で更新する必要がある。
(評者:北海道大学大学院経済学研究科・博士後期課程・環境経済学専攻 佐々木創)
ウィリアム・イースタリー(著)、 小浜裕久・冨田陽子・織井啓介(翻訳)『エコノミスト 南の貧困と闘う』2003年、東洋経済新報社
「なぜ貧困はなくならないのか」この国際協力に携わる人々、いや人類最大の課題ともいえるテーマに取り組んだ良書。世銀での実務経験がある筆者が、援助もダメ、投資もダメ、教育・人口抑制・債務救済もダメ…、と今までの援助形態に「貧困から抜け出す万能薬ではない」とダメ出しをしまくり、問題は経済学ではなく、具体的な政策の中に経済原理「人々がインセンティブに反応する」をうまく取り込めなかったからだ、主張する。やや論理展開に矛盾もあるが、世銀という援助機関がどういう論理で援助を実施しているか、経済理論も数式に頼らずに分かりやく解説されている。開発・援助の入門書を読んだ後の必読書。
(評者:北海道大学大学院経済学研究科・博士後期課程・環境経済学専攻 佐々木創)